子宮筋腫・子宮内膜症(治療・手術)


筋腫核出術(子宮筋腫)

筋腫核出術とは、筋腫のかたまり(コブ)の部分だけを切り取って子宮は残すという保存的手術のことです。
漿膜下筋腫や筋層内筋腫の場合は、開腹ないしは腹腔鏡を使用して、子宮の外側からメスを入れます。
子宮の内側に突出している粘膜下筋腫の場合は、腟の方から子宮鏡という器具を入れて筋腫のコブを切り取る方法があります。
しかし、どの筋腫の場合も、一般的に普及しているのは開腹で、子宮の外側からメスを入れていく術式です。
腹腔鏡・子宮鏡による核出術は、筋腫の大きさ、数、出来ている場所などによって、適応範囲が限られて来ます。
核出術の場合難しいのは、コブの部分だけを切り取ったあと、その傷痕を縫いあわせていく作業。
有茎漿膜下筋腫、有茎粘膜下筋腫といって、コブが茎のようなものの先にできていてぶらぶらしている場合は、その茎の部分を切ればすみますが、子宮の壁に直接メスを入れてコブを取った場合は、何層にも重なり合った子宮の筋層を一層一層丁寧に縫いあわせていかなくてはなりません。
数が多ければ時間もかかり、出血も多くなり、そのため輸血が必要になることもあります。
最近では、前もって自分の血を採って貯めておいて、手術中輸血が必要になったときにはそれを使う自己血輸血が導入されています。

集束超音波療法(子宮筋腫)

子宮筋腫の治療の中で、集束超音波療法(FUS=Focused Ultrasound Surgery)というものがあります。
虫眼鏡で日光を1点に集める要領で、超音波を筋腫に集中照射し、内部の温度を60〜90度にして筋腫組織を焼いてしまうという治療法です。
日本には2002年から導入されたばかりで、世界的にもまだ施行例の少ない、歴史の浅い治療法でのため、まだ治療データが十分揃っているとは言えず、術後の妊娠への影響、長期的な経過、再発の割合など、まだまだ不確定の要素が多いというのが実態です。
UAE同様、体にメスが入ることがなく、UAEよりも術後の痛みも少ないため、入院の必要がないというのがメリットとなります。
筋腫の大きさが3cm以上、 10cm以下で、一度に治療できるのが3個まで、過去に開腹手術を受けて皮膚に傷がある場合や皮下脂肪が2cm以上ある場合はダメ・・・など、適応の範囲がかなり限られていますので、受診しても適応対象外となる人がかなり多いのも特徴の一つ。
筋腫も消滅するわけではなく、ある程度サイズが縮小するだけですが、8割ほどの患者で月経痛・過多月経などの症状の改善が見られています。
しかし、UAEとは違って特定の筋腫だけを狙って処置する治療のため、多発性筋腫の場合は、そのときに処置対象にならなかった1〜2cmの筋腫が、大きくなって症状を引き起こす可能性があるので注意が必要です。

手術療法(子宮筋腫・子宮内膜症)

子宮筋腫・子宮内膜症の手術には病巣だけを取り除く場合と、子宮や卵巣を全摘出する根治療法があります。
<保存的療法>
子宮筋腫、卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)の核出。子宮内幕症frは卵巣・腹膜病巣の電気凝固などを行う。これにより治療後の妊娠、出産が可能。しかし、子宮内膜症が再発おそれもある。
<子宮全摘除術>
子宮筋腫の再発はないが、妊娠は出来ない。子宮内膜症では卵巣の摘出が必要なこともある。
<その他>
子宮内幕症(チョコレート嚢胞)には、膣式に嚢胞の内容腋を吸引した後に嚢胞壁を無水アルコールで固定するアルコール固定術。
子宮筋腫に対しては、子宮筋腫の栄養血管をふさぐことにより筋腫を小さくする、子宮動脈塞栓術が新しい治療方法として開発されましたが、例が少なく副作用や長期的な影響については今後の検討が必要。

薬物療法(子宮筋腫・子宮内膜症)

子宮筋腫の治療の中には、薬物療法が用いられることがあります。
薬物療法を行われる過程は以下が一般的となるでしょう。
<経過観察> 
子宮筋腫で症状が軽かったり、治療希望の無い場合は、定期的に検診を受ける。
<対症療法>
月経過多による貧血に増血剤や止血剤を投与。月経困難症には消炎鎮痛剤の服用。
<ホルモン療法>
閉経すると筋腫や内膜症病巣は縮小することを利用し、一定期間閉経と同じようなホルモン状態を作り筋腫や内膜症病巣を小さくする方法。
ただ、この治療は筋腫、内膜症病巣の縮小や月経時のつらい症状は改善するが、更年期障害と同じような副作用が心配される。
その他子宮内幕症には経口避妊薬(ピル)を用いて症状の改善をはかる方法などがある。
<漢方療法>
効果判定が難しい点があるが症状の改善が認められることも多い。

片側卵巣摘出術(子宮内膜症)

チョコレート嚢腫が破裂したり、茎捻転を起こして壊死を起こしたりした場合、また嚢腫が大きくて正常な組織が残せそうにない場合、悪性の疑いがある場合など、病変のある卵巣を丸ごと(ときには卵管も)摘出することがあります。
2つある卵巣のうちの1つを取ってしまうため、分泌される女性ホルモンの量も半分になってしまうと思われがちですが、通常、残ったほうの卵巣がちゃんと2つ分の機能を果たすことがわかっています。
したがって、毎月排卵も月経も起き、妊娠も可能です。
ただ、残った卵巣にも病変がある場合や、同時に子宮全摘術を行なう場合には、ホルモン分泌に異常が出ることがあります。

チョコレート嚢胞核出術(子宮内膜症)

子宮内膜症の中でも、卵巣の中に内膜組織が増殖する、チョコレート嚢胞で、卵巣が大きく腫れてきたり(5〜6センチ程度が目安)、癒着や不妊の原因になっている場合に行われる保存的手術です。
卵巣に針のようなものを刺して嚢腫の中の嚢胞液を吸引した上で、病変のある嚢胞を袋ごと取り出して卵巣を修復するという方法となり、再発率が低めです。
その他、術中の細胞診によって悪性かどうかの鑑別がつくという利点があるほか、癒着の剥離なども同時に行なえるため、痛みなどの症状の軽減にも役に立つと思われています。
腹腔鏡下で行なうことも可能ですが、卵巣が7〜8センチ以上の大きさになっていたり、ひどく癒着していると可動性が低いため、開腹で行なうことが多くなるでしょう。

子宮内膜症の治療方法(子宮内膜症)

子宮内膜症の治療は以下のようなものがあります。
<薬物療法>
・対症療法=鎮痛薬で痛みをとる
・ホルモン療法=女性ホルモンの分泌を抑え、病巣を小さくし妊娠率を上げる
<手術療法>
・保存的手術=腹腔鏡で病巣をレーザーメスや電気メスで焼き切る
・根治手術=子宮・卵巣を含めて病巣を取り出す
それぞれの治療法は、内膜症の程度や状態によって、医師と患者自身との間で相談決められます。

病変の除去・焼灼および癒着剥離(子宮内膜症)

高周波電気メスやレーザーを使って腹腔内の病巣を焼いたり、癒着している部分(特に卵巣・卵管や直腸と子宮の間のダグラス窩と呼ばれる部分)を剥がすことにより、月経痛などの症状を軽減し、妊娠しやすくすることができます。
近年は腹腔鏡を使って行なうことが多いですが、凍結骨盤(フローズンペルヴィス)といわれる、極度に骨盤内の癒着が激しく、臓器が一かたまりになってしまっているような場合や、病巣が動脈や膀胱などに接している場合は、高度な技術を要するので、開腹した方が安全です。

腹腔鏡下手術(子宮筋腫)

腹腔鏡はおへその周辺に3〜4箇所の小さな穴を開けて、カメラやメス、鉗子を差し入れて、お腹を開くことなく手術を行なうための道具です。
婦人科では卵巣嚢腫の核出術や、卵巣の摘出、内膜症の癒着剥離や病巣焼灼に使われることが多く、筋腫の核出術にも使えますが、筋腫の数、大きさ、できている位置によっては、適応にならないこともあります。
筋腫が大きい場合、小さな穴から出すためには、お腹の中で細かく砕く必要がありますし、筋腫を取った後の子宮の傷を縫い合わせるときも、モニターを見ながら遠隔操作で行なうため、開腹手術に比べかなり時間がかかります。
腹腔鏡下手術は全身麻酔下で行われるので、時間が長くなるとそれだけ体への負担やリスクも大きくなります。
時間を短縮するために、お腹に開けた穴の1つを少し広めに切り拡げ、そこから筋腫を引っ張り出したり、直接目で見ながら縫合したりする、LAM(laparoscopically-assisted myomectomy 腹腔鏡併用核出術)という術式もあり、これは、通常の開腹術より傷口は小さく、癒着などのリスクは少なくなると言われています。

子宮鏡下手術(子宮筋腫)

子宮鏡は腟から電気ループやレーザーメスがついた小さなカメラを子宮の中に差し入れて、粘膜下筋腫やポリープを切除する方法です。
お腹にメスを入れず、部分麻酔で済むという意味では、手術の中で一番からだへの負担が少なく、回復も早い術式となります。
しかし、子宮鏡は子宮の内側に病巣がある場合にのみ有効で、筋層内筋腫や漿膜下筋腫、腹腔内や卵巣の内膜症病変などの治療には使えません。
また、大きさによっては、粘膜下筋腫であっても子宮鏡で核出するのが難しいこともあります。

子宮動脈塞栓療法(子宮筋腫、子宮腺筋症)

子宮動脈塞栓療法は、UAE(Uterine Artery Embolization)ともいい、IVR(血管内手術)の一種です。
足の付け根を小さく切開して動脈に細い管(カテーテル)を通し、そこから細かい粒子状の物質を注入して筋腫に栄養を補給している子宮動脈を塞ぎ、筋腫を兵糧攻めにして縮小するのを待つ、という治療法となります。
日本では1990年代後半から行なわれるようになった術式で、主に放射線科の医師が行なっていますが、最近では子宮腺筋症の治療に用いる施設も出てきています。
時に子宮内膜側に近い筋腫の場合は内腔に押し出されて、筋腫分娩の形で体外に排出されることもありますが、この方法で筋腫が完全に消滅することはありません。
しかし、およそ8〜9割のケースで、ある程度サイズが縮小し、過多月経や貧血などの症状が改善されると言われています。
ホルモン療法と違い、一度縮小した筋腫が再度大きくなることはなく、多発性の筋腫でも原則的に一度の施術で効果を得ることができ、再発の可能性は低いと言われていますが、すべての筋腫が子宮動脈のみから栄養を得ているわけではなく、筋腫の位置によっては卵巣や膀胱の動脈から血管が伸びていることもありますので、そういう場合は期待した効果が得られないこともあります。
また、逆に卵巣への血流が阻害されて、卵巣機能が低下するという合併症も見られます(特に45歳以上では10%を超す割合で卵巣機能不全が報告)。
子宮腺筋症の場合は、一定期間は子宮サイズの縮小、過多月経などの症状の改善が期待できますが、再発することも多く、まだ発展途上の治療法です。

子宮全摘術(子宮筋腫、子宮腺筋症)(子宮筋腫・子宮内膜症の治療)

子宮全摘は子宮腺筋症があって子宮全体が腫れ上がり、一部だけ切っても症状の解決が期待できない場合、また多発性の筋腫でコブだけ取ろうとしても子宮が穴だらけになり出血が多量になる恐れもあるような場合、さらには閉経後に急速に筋腫が大きくなっていて悪性の恐れがある場合などに行われます。
しかし、閉経前の場合、卵巣を取ってしまうと一気に更年期症状が出たり、骨粗鬆症や心疾患などの危険性も高くなり、長期的なホルモン補充療法が必要となる可能性があり、すでに卵巣嚢腫等で片卵巣を摘出している方の場合、子宮全摘によって残った卵巣の機能も低下する可能性も出てきます。
子宮全摘の方法には開腹全摘術、腟式全摘術、内視鏡下全摘術などがあり、本人の出産経験や筋腫の大きさ、癒着の程度などによって、どの方法が一番適しているかは変わってくるでしょう。